犬の股関節脱臼における大腿骨頭骨頸切除術 2024.04.24

歩き方がおかしいという主訴で来院のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルのエイト君。

 

院内で歩き方を見ると左足を痛そうにして歩様の異常が見られた。

レントゲンを撮ってみると左後肢の股関節の前背側脱臼が確認されました。(レントゲン画像の赤丸の部分です。)

麻酔をかけて大丈夫かを血液検査などで確認したのち、すぐに鎮静化で股関節脱臼の整復(左股関節前背側脱臼の非観血的整復)を行いました。

この処置は、再脱臼することが多く、エイトちゃんでも後日まだ歩き方がおかしいとのことでレントゲンを撮ると再脱臼してしまいました。

飼い主様と話し合い股関節脱臼に対して、大腿骨頭骨頸切除術(Femoral Head and Neck Osteotomy:FHO)を実施しました。

脱臼した大腿骨頭がその関節の受け皿である股関節の寛骨臼と当たることで痛みが生じ、うまく歩けなくなります。

FHOとは、大腿骨頭の骨頸部を切除して大腿骨頭と寛骨臼の接触を消失させて、偽関節(線維性偽関節)を形成する手術です。

手術により接触による痛みはなくなり、関節がなくなって偽関節になるのですが、後肢の筋肉にしっかり支えられることで術後歩けるようになります。

手術ではまず、しっかり毛刈り、消毒を行い、ドレーピングを施します。

皮膚及び後肢の筋肉を剥離、一部切断しつつ大腿骨頭を露出させます。

大腿骨頭が見えてきたら周りの筋肉を剥離して大腿骨頭骨頸部まで露出させます。

露出後はマイクロエンジンのドリルにて骨頭骨頸部を切除します。

骨頭骨頸部が切除できたら、切除ラインと骨の残りなどがないかを確認して、切断面をマイクロエンジンのダイヤモンドバーで綺麗になめらかにする処置をします。

切除面の処置が終わったら、切断した筋肉の縫合や剥離した筋肉を戻し、皮下組織と皮膚を縫合して手術終了です。

手術終了後、麻酔からの覚醒も良く。術後すぐでもなんとか足をつけることができたエイト君です。

術後1週間後です。術部は腫れ上がったりすることもなく。順調です。

お座りもしっかりできるようになりました。(手術前はうまく座れずおすわりが出来なかったのです。)

術後2週間で抜糸しました。まだ左の筋肉は右に比べると萎縮気味です。ですが、だいぶしっかり歩けるようになってきました。

手術から3ヵ月後です。術後1か月ぐらいはまだ歩き方が少しぎこちなかったですが、今ではしっかり歩けています。

後ろから見てもやや術部がくぼんでますが、筋肉の萎縮もほぼ無くなり、しっかり歩けて、院内では元気に走る姿も見せてくれました。

当院併設のトリミングにも1~2か月に1回くらい来てくれるので、日に日に元気になってくれててとても安心しました。

 

股関節脱臼は股関節に強い負荷がかかったり、股関節形成不全やレッグ・カルベ・ペルテス病などが原因などで起こります。

痛みからの改善と日常生活の復帰を目的に手術をしました。

今後経過は追っていきますが、エイト君が元気になってくれて良かったです。