ウサギの血尿 2024.06.12

血尿が出ているという主訴で来院された1歳5か月の雌のうさぎさん(ネザーランドドワーフ)のはるちゃん。

陰部から血尿がみられ、検査すると血の反応がありました。
避妊手術は、まだされてないとのことだったので、子宮からの出血を強く疑い、血液検査、レントゲンなどのスクリーニング検査を実施しました。
血液検査より貧血(PCV19.9%など)が認められ、院内でも出血がありました。
このまま出血が止まらないと命に関わると飼い主様に説明し、緊急手術を行いました。
はるちゃんの子宮は左の子宮角(写真の赤線で囲んだ部分)が右側より明らかに腫れていることが確認できました。
手術は無事終了し、摘出した子宮卵巣を切開すると
左子宮角内には血餅(血が溜まってかたまったもの、写真の青線で囲んだ部分)がパンパンに詰まってました。
子宮内で持続的に出血していたんだと思います。
今回摘出した子宮卵巣は病理検査を行い、結果は「子宮内膜静脈瘤」という病理組織診断名でした。
子宮内膜静脈瘤とは子宮内の静脈がコブ(瘤)のように膨らむことで、この静脈瘤が破裂すると大量出血を伴います。
今回、はるちゃんは飼い主様が、すぐ気付いて病院に連れてきてくださって、すぐに手術を行ったので、何とか一命を取り留めることが出来ました。
手術を乗り越えてくれたはるちゃんは、後日、血液検査をしたら貧血は改善され、
今ではすっかり元気になってくれています。

はるちゃんは1歳5か月とまだ若いですが、おそらくエストロゲン(卵胞ホルモン)の過剰分泌などの
性ホルモンの不均衡により、子宮内膜の静脈が拡張し出血しやすい傾向になってしまい、
一部の血管が静脈瘤を形成して破裂寸前の状態になっていたのだと思われます。
完全に破裂していたら亡くなっていた可能性も高かったです。

また、ウサギの子宮では子宮腺癌が好発することが知られています。
ある系統の品種(タン、ハバナ、ダッチ、イングリッシュ、セーブル、ヒマラヤンなど)では
4歳以上での発生率は50~80%という報告もあります。

雌の未避妊のウサギさんで血尿が出たのを発見したら、すぐに病院にご連絡ください。

ウサギさんの全身麻酔や手術は、麻酔リスクや手術侵襲のリスクが犬猫よりも大きいため、
不安にもなりますが、雌のうさぎさんは本当に子宮疾患が多いので、
当院では1歳前後くらいの時期での避妊手術を推奨しております。

今回、はるちゃんが元気になってくれて本当によかったです。