犬の会陰ヘルニア整復術 2025.01.17

うんこ(便)が出にくいという主訴で来院されたトイプードルさんのレオン君です。

3~4ヵ月前から便が出にくく、他の動物病院で定期的に便を取ってもらってましたが、なかなか良くならないとのことです。
身体検査やレントゲン検査を行い、会陰ヘルニアの可能性が高いとお伝えしました。

レントゲンでは便がたくさん溜まってるのが確認できました。

会陰ヘルニアは骨盤周囲の筋肉が萎縮(筋肉がぺらぺらになる)してしまい、その隙間に腸などが飛び出して、便が詰まってしまう病気です。
この病気はその隙間を埋めるための手術をしないと治らないとお伝えしました。またレオンちゃんは去勢をしてなかったので、この病気は男性ホルモンの影響も示唆されるため、今回、会陰ヘルニア整復術と去勢手術を実施しました。

赤丸で囲った部分の筋肉が萎縮し筋肉の間から腸が飛び出していました。手術に向けて毛刈りした様子です。

消毒は念のため広範囲にしております。

患部の皮膚を切開して腸が飛び出てる部位を探します。

今回の手術ではポリプロピレンメッシュを用いての会陰ヘルニア整復術です。メッシュをヘルニア孔のサイズにトリミングして、仙結節靭帯という靭帯と内閉鎖筋およびその近くにある坐骨の骨膜、肛門近くの外肛門括約筋の3か所にメッシュを縫合していきます。

このようにメッシュを円錐状にしてヘルニア孔を塞いでいきます。

出血や周りの神経(特に坐骨神経)に気を付けながら縫合していきます。

仙結節靭帯と坐骨の骨膜はかなり強度があるのでここをしっかり縫合しておけばメッシュが外れる可能性がかなり低くなります。

メッシュの縫合が終われば、皮下組織と皮膚を縫合して手術終了です。

手術後1週間後の術部です。

術後3か月後の状態です。

便の出方はまだ完全ではないですが、便をやわらかくする薬、大腸の動きを良くする薬や食物繊維の多いサプリや療法食を続けて、摘便することなくしっかりと便が出るようになってきました。

半年以上経った今では少しずつ内服薬の量を減らしていって、お薬なしの療法食のみでしっかり便が出ております。

再発も多い病気ではありますが、今は元気なレオンちゃんです。

便が出ないというのは健康に日常生活を送る上で相当ストレスになります。

またこの病気は男性ホルモンとの関連性もあると言われていますので、去勢手術も有効です。

もし、「便が出にくい」、「お尻周りが腫れてる」などの症状があればいつでも当院にご連絡ください。